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FF11

シーフの物語 - 盗賊、探検家、義賊

目次

Theif

 

へそ出しルックのシーフのイメージ

ファンタジーRPGに登場するシーフや盗賊が中東風の装いをしているイメージには、アラビアンナイト(『千夜一夜物語』)の影響が大きく関係しています。その背景には、いくつかの要因が考えられます。

1. アラビアンナイトのエキゾチックな世界観

『千夜一夜物語』は中東を舞台にした冒険譚で、砂漠、オアシス、宮殿、バザールなど、多様なロケーションや文化的要素が登場します。ここではスリや盗賊といったキャラクターが頻繁に描かれ、彼らはしばしば大胆な策略やトリックを用いることが特徴です。例えば、盗賊たちが宝物を隠したり、街の市場で素早く動き回ったりする描写が多いため、機敏さや巧妙さが強調されます。

千夜一夜物語: バ-トン版 (ちくま文庫)
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2. 衣装のイメージ

シーフや盗賊キャラクターが「へそ出しルックの上着」を着用するイメージは、伝統的な中東の衣装に由来します。具体的には、アラブやペルシアの民族衣装である「シャルワール」(ゆったりとしたズボン)や「カフタン」(長いチュニック)などが、体の動きやすさを重視したデザインとして想起されることが多いです。特に、へそが露出する衣装は、映画やイラストなどに描かれるファンタジー表現の中で、キャラクターの軽快さや敏捷性を強調するために使われます。

アラビアンナイトの世界観では、これらの衣装がキャラクターのエキゾチックな雰囲気を引き立てるため、ファンタジーRPGでも「冒険心」「異国情緒」「神秘性」を視覚的に表現するために用いられています。

3. メディアの影響

特に20世紀の映画やアニメ、そしてファンタジー小説が、アラビアンナイト風のキャラクター像を広めたことも要因の一つです。映画『アラジン』などが世界的に人気を博し、アラビアンナイトに登場する泥棒や盗賊が魅力的に描かれたことで、これがRPGに影響を与えました。シーフが素早く動けることを示すために、露出が多い軽装がイメージとして定着したのです。

アラジン (吹替版)
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4. 武器と小道具の由来

短剣やナイフといった武器もまた、アラビアンナイトの影響を受けています。『千夜一夜物語』に登場する盗賊は、素早く使える小型の武器を好む傾向があり、ファンタジーRPGではこれがシーフの象徴的な武器として取り入れられています。隠し武器や投擲ナイフなどは、密かに動くシーフのキャラクター性を強調する小道具として、説得力があります。

したがって、ファンタジーRPGにおけるシーフのビジュアルイメージには、アラビアンナイトの影響が色濃く反映されています。これは、異国情緒を漂わせつつも、シーフの特性である機敏さや狡猾さを効果的に表現するためのデザインであり、エキゾチックな要素を盛り込むことで、キャラクターの魅力を高めているのです。

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シーフの語源

「シーフ (thief)」という英単語の語源は、古英語の "þēof"(theof)にさかのぼります。さらにその起源は、ゲルマン語派の古い言葉に由来しており、共通ゲルマン祖語の **"þeubaz"(盗人)**に関連しています。ここから、英語だけでなく、ドイツ語の "Dieb" やオランダ語の "dief" など、他のゲルマン諸語にも似た形で受け継がれました。

この語源のルーツをさらに遡ると、インド・ヨーロッパ祖語における "*teubh-"(盗む、隠す)という意味の語幹が存在します。この語幹は「盗む」や「密かに行動する」という概念を表し、隠されたものを取る、隠れて行動するというイメージが含まれていました。

1.シーフの語源のポイント

  • 古英語 "þēof" → 現代英語の "thief"
  • 共通ゲルマン祖語 "þeubaz"(盗人) → 他のゲルマン諸語にも類似語が存在
  • インド・ヨーロッパ祖語 "*teubh-"(盗む、隠す) → 語源的な意味として「隠れる」「盗む」行為を示唆

この語源的背景からもわかるように、「シーフ」にはもともと「こっそりと盗む」「隠れる」といったニュアンスが強く含まれており、ファンタジーRPGにおけるシーフの特徴である「隠密行動」や「盗む能力」といったイメージにも通じています。

2. アラビア語での盗賊・シーフ

アラビアやペルシアの文化において、シーフ(盗賊)を指す言葉は、英語の "Rogue" や "Assassin" とは異なり、それぞれ特有の言葉やニュアンスがあります。以下に代表的な言葉を紹介します。

  • سارق (Sāriq): 「サーリク」は一般的に「盗人」や「泥棒」という意味です。日常的な意味で「物を盗む者」を指します。
  • لص (Liṣṣ): 「リッス」は「泥棒」や「強盗」という意味で、こちらもよく使われる言葉です。密かに行動して物を盗む者というニュアンスがあります。
  • قاطع طريق (Qāṭi‘ ṭarīq): 「カータイ・タリーク」は「道を断つ者」という意味で、「山賊」や「追いはぎ」といった旅人を襲う盗賊を指します。特に、キャラバンを襲撃する盗賊に使われました。

3. ペルシア語での盗賊・シーフ

  • دزد (Dozd): 「ドズド」は「盗人」や「泥棒」という意味です。ペルシア語で一般的に使われる単語で、小規模な窃盗から大規模な盗みに至るまで幅広く使われます。
  • راهزن (Rāhzan): 「ラーフザン」は「道(رَاه)」+「盗む者(زن)」という意味で、「山賊」や「盗賊」として、旅行者やキャラバンを襲う者を指します。

4. ローグやアサシンについて

  • Rogue(悪党・ごろつき): アラビアやペルシアには「ローグ」に相当する具体的な単語はありませんが、「ごろつき」や「ならず者」を表す言葉はあります。しかし、「ローグ」は悪賢くも狡猾な人物を指すため、ニュアンス的には مشاغب (Mushāghib) など、いたずら者やトラブルメーカーを指す言葉が使われる場合があります。
  • Assassin(暗殺者): アサシンという言葉は、まさにペルシア語起源で、暗殺者の集団である「ハサン・サッバーフ」に由来しています。彼らは حشاشين (Ḥashāshīn) と呼ばれました。「ハッシーシを使う者」という意味があり、中世に暗殺を行っていたイスラム教シーア派の秘密結社を指します。この言葉が変化して "Assassin" になりました。

このように、アラビアやペルシアでは「シーフ」や「盗賊」に対する言葉が文化的な背景と密接に結びついており、ファンタジーRPGのキャラクターイメージに大きな影響を与えています。

 

世界のシーフ

中東地方以外の世界各地には、様々な文化や時代背景に応じた独自のシーフや泥棒、盗賊が存在しており、それぞれ特徴的な活動や伝承があります。以下に、いくつかの代表的な例を紹介します。

1. ヨーロッパ

  • フォレスト・アウトロー(Forest Outlaws): 中世イングランドでは、社会的な不平や重税に反抗する形で、森に隠れ住む「アウトロー(無法者)」がいました。最も有名なのは ロビン・フッド で、彼はシャーウッドの森で「富者から盗んで貧者に与える」義賊として伝えられています。彼の物語は、弓と短剣を駆使して兵士や貴族を出し抜くエピソードが多く、隠密行動が特徴です。
  • バンド・オブ・ブレゲン(Band of Brigan): 中世のヨーロッパでは、街道や山間部を襲う盗賊団「ブリガンズ(Brigands)」が恐れられていました。彼らはキャラバンを待ち伏せし、身代金を要求することもありました。
ロビン・フッド (吹替版)
ロビン・フッド (吹替版)

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2. 日本

  • 怪盗(Kaitō): 日本の怪盗は、しばしば伝説的な存在として語られます。例えば、 石川五右衛門 は安土桃山時代の有名な盗賊で、歌舞伎や講談において「大泥棒」として描かれています。彼は豪快な盗みを働き、金持ちを狙いながら庶民に親しまれた義賊とされています。石川五右衛門は忍者のような隠密行動や罠を避ける技術を駆使していたとも伝えられます。
  • 忍者(Ninja): 忍者は主に情報収集や暗殺を行う隠密集団ですが、特定の任務として盗みを働くこともありました。隠れ蓑や変装を用いたり、夜陰に乗じて敵の領地に潜入する技術が発達していました。
仮面の忍者 赤影
仮面の忍者 赤影

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3. 中国

  • 紅花會(Honghua Hui): 中国には、明や清の時代に数々の盗賊団や義賊集団が存在しました。紅花會(紅花会)は、清王朝に抵抗する秘密結社であり、しばしば不正を正すために役人を出し抜いたり、悪徳商人から財産を奪うことがありました。
  • 水滸伝(Shuǐhǔ Zhuàn)の梁山泊の豪傑たち: 中国四大奇書の一つ『水滸伝』には、108人の義賊たちが登場します。彼らは「梁山泊」という湖沼地帯を拠点にし、不正な官僚や悪人たちと戦います。義賊として描かれる彼らは、武術の達人でありながら、知恵を用いて敵を欺く場面も多く見られます。
水滸伝
水滸伝

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4. インド

  • サグ(Thuggees): インドでは、19世紀に実在したとされる「サグ」と呼ばれる盗賊集団が有名です。彼らはヒンドゥー教の破壊の神「カーリー」に捧げるために、旅人を襲い、儀式として絞殺する恐ろしい盗賊団として知られています。サグは変装し、キャラバンに潜り込んで信頼を得た後に襲撃を行いました。英語の「thug(悪党)」はこの集団に由来します。
Thug

5. アフリカ

  • サハラのトゥアレグ族の襲撃者: サハラ砂漠を横断するキャラバンは、しばしばトゥアレグ族などの遊牧民の襲撃を受けました。これらの盗賊たちは、ラクダのキャラバンに目をつけ、物資を奪うために巧妙な戦術を用いました。砂漠での高い生存能力と速い移動力が彼らの武器でした。
  • ソマリアの海賊: 古くから、アフリカの海賊はインド洋や紅海沿岸を襲撃し、船舶を狙って積み荷や金品を奪っていました。ソマリア沿岸では、近代に至るまで海賊行為が行われており、その狡猾さと強奪の技術は恐れられました。

6. 北アメリカの先住民

  • 戦士盗賊団: 北アメリカの先住民の中には、戦争や対立する部族との抗争の一環として、敵の村に夜襲をかけて馬を盗むなどの行為がありました。馬は貴重な資産であり、これを盗む行為は部族間の力関係に大きな影響を与えるものでした。

7. 地中海地方

  • 海賊(Pirates): 地中海では、ギリシャ、ローマの時代から「海賊」が存在しました。特に有名なのは、オスマン帝国時代の バルバリア海賊 で、アルジェリア、チュニジア、リビアの沿岸から地中海を横行し、交易船を襲撃して略奪を行っていました。彼らはまた、奴隷を捕らえることもあり、地中海一帯に恐怖を広げました。
海賊の世界史
海賊の世界史

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各地にはそれぞれ独自の盗賊文化があり、彼らの活動は地域の歴史や社会的背景と密接に関係しています。義賊として庶民に親しまれた者もいれば、恐ろしい犯罪集団として恐れられた者もいて、それぞれの文化の中で様々な物語や伝説を生み出しています。

FF11的に考えるエキストラジョブ

上記のように、シーフを源流として様々な派生型が生まれています。
FF11的に考えれば、エキストラジョブの狩人(アウトロー)、忍者、コルセア(海賊)、青魔道士(アサシン)などはシーフと深いつながりがあると言えます。

 

トレジャーハンターとしてのイメージ

映画『インディー・ジョーンズ』に見られるトレジャーハンターや冒険家のイメージは、いくつかの歴史的背景や文化的影響を源流にしています。そのルーツをたどると、実在した冒険家、探検家、そして19世紀から20世紀初頭の冒険文学や考古学の発展が大きな影響を与えています。

インディ・ジョーンズ/レイダース 失われたアーク《聖櫃》
インディ・ジョーンズ/レイダース 失われたアーク《聖櫃》

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1. 実在の探検家・考古学者

『インディー・ジョーンズ』のようなキャラクターには、実在した冒険家や考古学者の功績が色濃く反映されています。19世紀から20世紀初頭にかけて、西洋の探検家たちはアジア、アフリカ、中東、南米など、世界中の未開の地を探検し、古代の秘宝や遺跡を発見することに情熱を燃やしていました。代表的な人物としては:

  • ハワード・カーター(Howard Carter): 古代エジプトの考古学者で、1922年にツタンカーメン王の墓を発見しました。この発見は、当時の世間に大きな考古学ブームを巻き起こし、失われた秘宝を探すロマンをかきたてました。
  • パーシー・フォーセット(Percy Fawcett): イギリスの探検家で、アマゾンの奥地に「失われた都市Z」を探し求めたことで知られています。彼の冒険は神秘的で、未開のジャングルに隠された文明を見つけようとするロマンが『インディー・ジョーンズ』のジャングル探検に反映されています。
ロスト・シティZ 失われた黄金都市(吹替版)
ロスト・シティZ 失われた黄金都市(吹替版)

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2. ヴィクトリア朝時代の冒険文学

19世紀後半から20世紀初頭にかけて、ヨーロッパで冒険文学が人気を博しました。これらの物語は、未知の世界や失われた都市、古代の呪われた宝物といったテーマを扱い、多くの冒険家やトレジャーハンターのイメージを形作りました。主な作品には:

  • ヘンリー・ライダー・ハガードの『ソロモン王の宝窟』(King Solomon’s Mines): 失われた古代の宝を探し求める冒険小説で、謎と秘宝を巡る壮大な冒険が描かれています。この作品は、トレジャーハンターのプロトタイプとも言える影響を与えました。
  • アーサー・コナン・ドイルの『失われた世界』(The Lost World): 南米の秘境で恐竜が生き残る場所を発見する探検の物語で、未知の土地を探るスリルと発見が強調されています。
ソロモン王の洞窟 (創元推理文庫 518-1)
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失われた世界【新訳版】 (創元SF文庫)
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3. 植民地時代の考古学とエキゾチシズム

19世紀から20世紀にかけて、ヨーロッパ列強が中東やエジプトなどの植民地で大規模な考古学的調査を行い、多くの古代遺跡が発掘されました。この時代、考古学は純粋な学問であると同時に、未知の世界を探検し、宝を見つける冒険の側面を持っていました。西洋の探検家たちはピラミッドやメソポタミアの遺跡、バビロンの都市などを調査し、それが神秘的な冒険物語を生み出す土壌となりました。このエキゾチックな冒険のイメージが、インディー・ジョーンズのようなキャラクターに反映されています。

4. フィクションの冒険ヒーロー

『インディー・ジョーンズ』は、1920年代から30年代にかけて人気を博した「パルプ雑誌」や「冒険小説」のヒーローたちにも影響を受けています。これらの雑誌には、失われた宝を求めて秘境を駆け巡る勇敢な冒険者が頻繁に登場しました。特にアメリカでは、「トレジャーハンター」や「探検家」を主人公とする物語が大衆文化の一部として受け入れられました。

  • パルプフィクションの影響: 『インディー・ジョーンズ』のようなキャラクターは、こうしたパルプフィクションの冒険ヒーローに直接影響を受けています。これらの物語では、ダンジョンやトラップの仕掛けられた遺跡、古代の呪いなどが重要な要素として描かれました。

 

5. 考古学ブームとミステリー

20世紀初頭、特にエジプトの古代遺跡の発見や発掘調査は、世界中で大きなセンセーションを巻き起こしました。ツタンカーメンの墓の発見に伴う「呪い」の噂や、ピラミッドの内部に隠された財宝などは、当時の冒険物語に多大な影響を与えています。これらの要素が、古代の秘宝や遺跡を巡る冒険に神秘的な魅力を与え、『インディー・ジョーンズ』のようなストーリーを生み出す原動力となりました。

 

『インディー・ジョーンズ』のトレジャーハンターや冒険家のイメージは、実在した探検家たちの功績、ヴィクトリア朝の冒険文学、パルプ雑誌のフィクションヒーロー、そして考古学ブームによるエキゾチックな世界への憧れといった複数の要素が融合してできています。これらの要素が、古代遺跡のトラップや秘宝を探し求める冒険家のロマンを形作り、映画や物語における冒険の象徴として描かれているのです。

 

歴史に名を馳せたシーフ

歴史上、実在した有名なシーフや盗賊には様々な人物がいます。彼らは盗みを生業としながらも、時には庶民の味方として伝説化されることもありました。以下は、世界各地で有名なシーフや盗賊の例です。

1. ロビン・フッド(Robin Hood)

  • 活動時期: 中世イングランド(12世紀~13世紀頃)
  • 背景: ロビン・フッドはイングランドの伝説的な義賊で、シャーウッドの森を拠点に活動していたとされています。彼は「富める者から盗んで貧しい者に与える」英雄として語り継がれており、しばしば仲間たちと共に領主や王の兵を相手に戦ったと伝えられています。弓の名手で、機知に富んだ策略を用いることで知られています。
  • 影響: ロビン・フッドの物語は、多くの文学作品や映画に登場し、貧しい人々の味方として庶民に愛されるキャラクターとなっています。

2. 石川五右衛門(Ishikawa Goemon)

  • 活動時期: 16世紀(戦国時代~安土桃山時代)
  • 背景: 石川五右衛門は日本の伝説的な大泥棒で、「金持ちから奪い、貧しい人々に分け与える」義賊として知られています。戦国時代末期に、豊臣秀吉の政権に対して反抗したとも伝えられ、数々の豪快な盗みを働きました。しかし、最終的には豊臣秀吉によって捕らえられ、釜茹での刑に処されたという有名な逸話があります。
  • 影響: 石川五右衛門の物語は、歌舞伎や映画などで語り継がれ、日本文化に深く根付いています。

3. ブラック・バート(Black Bart)

  • 本名: チャールズ・アール・ボールズ(Charles Earl Bowles)
  • 活動時期: 19世紀(アメリカ西部開拓時代)
  • 背景: ブラック・バートは、詩を残すことで有名なアメリカ西部の紳士的なステージコーチ強盗でした。武器を使用せず、常に丁寧な態度で犯行に及び、犯行現場に詩を置いて去るというユニークな特徴があります。彼は銀行やステージコーチを狙いながらも、暴力を嫌う盗賊として知られています。
  • 影響: ブラック・バートはアメリカ西部開拓時代の伝説の一部として語られ、彼のエピソードは多くの西部劇に影響を与えました。

4. ジョン・ハーバート・ディリンジャー(Dillinger)

  • 活動時期: 1930年代(アメリカ大恐慌時代)
  • 背景: ジョン・ハーバート・ディリンジャー(John Herbert Dillinger)はアメリカの有名な銀行強盗で、1930年代の大恐慌期に数々の銀行を襲撃しました。彼はカリスマ的な魅力と大胆不敵な行動で知られ、警察との銃撃戦や大胆な脱獄などを繰り返して伝説的な存在となりました。
  • 影響: ディリンジャーの物語は、多くの映画や犯罪小説に影響を与え、「アウトロー・ヒーロー」の象徴として語られています。

5. カリオストロ伯爵(Count of Cagliostro)

  • 本名: ジュゼッペ・バルサモ(Giuseppe Balsamo)
  • 活動時期: 18世紀(ヨーロッパ)
  • 背景: カリオストロ伯爵はイタリア出身の詐欺師・錬金術師で、ヨーロッパ各地を旅しながら裕福な人々を騙して財産を巻き上げた人物です。彼は超自然の力を持つと自称し、錬金術や不老不死の薬を売り歩いていました。フランス革命前夜には多くのスキャンダルに巻き込まれました。
  • 影響: カリオストロ伯爵は「怪盗カリオストロ」としても知られ、フィクションの世界で度々登場し、特に「ルパン三世 カリオストロの城」などで有名になりました。

6. ジェシー・ジェームズ(Jesse James)

  • 活動時期: 19世紀(アメリカ南北戦争後)
  • 背景: ジェシー・ジェームズはアメリカ西部開拓時代の有名なアウトローで、兄のフランク・ジェームズと共に「ジェームズ=ヤンガー・ギャング」を結成し、銀行や列車を襲撃しました。南北戦争後の混乱期に英雄視された一方で、数々の犯罪を重ねたことで賞金首として追われました。
  • 影響: 彼の物語は西部劇やアメリカン・フォークソングに登場し、無法者としてのイメージが語り継がれています。

7. ヴィドック(Vidocq)

  • 本名: ウジェーヌ=フランソワ・ヴィドック(Eugène-François Vidocq)
  • 活動時期: 18世紀末~19世紀初頭(フランス)
  • 背景: ヴィドックは元々犯罪者であり、盗賊としての人生を送っていましたが、後にフランス警察の秘密捜査官となり、世界初の私立探偵事務所を開設した人物です。彼は犯罪の手口に精通し、刑事捜査の先駆者として活躍しました。自身の過去を生かして、多くの犯罪者を逮捕したことで有名です。
  • 影響: ヴィドックの生涯は、ヴィクトル・ユーゴーの『レ・ミゼラブル』の登場人物「ジャン・ヴァルジャン」のモデルの一つとされており、多くのフィクションに影響を与えています。

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これらのシーフや盗賊たちは、単なる犯罪者ではなく、しばしばカリスマ性や大胆な行動で人々を魅了し、時には社会的な不正に立ち向かう「義賊」として伝説化されました。その物語は、各地の文化や歴史に深く根付いており、現在も様々なメディアで語り継がれています。

 

義賊としてのシーフを生んだ社会構造

義賊として名を残した多くのシーフたちが、単なる悪党ではなく庶民のヒーローとして伝説化された背景には、封建社会の厳しい階級制度や強大な権力への不満が大きく影響しています。

1. 封建主義と権力構造

近代以前の封建社会では、権力が王や領主、貴族などの限られた支配階級に集中していました。庶民は重税を課されたり、土地や生活に制約を受けたりして、不平等な扱いを強いられていました。法律は確かに存在していましたが、その運用は必ずしも公平ではなく、しばしば権力者の都合や思惑によって左右されていました。特に地方の領主や役人は、庶民を搾取することが少なくなく、正義が行われない場面も多くありました。

2. 民衆の不満と義賊の存在意義

こうした社会の中で、庶民の間には当然のように不満や憎悪が蓄積されていきます。しかし、庶民が自ら権力に逆らうことは危険であり、容易ではありませんでした。そのため、権力者に立ち向かい、彼らの富を奪って庶民に分け与える「義賊」が現れると、人々はその行動に自分たちの希望を重ね、英雄視するようになりました。

3. 義賊の象徴性

義賊たちが庶民の味方として伝説化された理由は、彼らが「不正な権力に挑む者」「弱きを助ける者」として描かれることにあります。ロビン・フッドや石川五右衛門などは、その行動によって単に富を奪うのではなく、権力者の不正を暴き、庶民の声を代弁する象徴的な存在となったのです。彼らは「正義の味方」としての物語が語られることで、民衆に希望や心の救いを与える役割を果たしました。

4. 現代との違い

現代社会では、法律が発展し、人権や自由が尊重されるようになり、少なくとも表向きは公正な社会システムが整えられています。もちろん、現代社会にも不公平や権力の乱用は存在しますが、民主主義制度や司法制度がある程度のチェック機能を果たしているため、庶民が直接的に「義賊」を求める状況は少なくなりました。

しかし、近代以前の社会では、法律や司法制度が権力者によって簡単にねじ曲げられることが多く、庶民にとって自分たちを守る手段がほとんどなかったのです。そのため、義賊の物語は強く支持され、「不正な社会を変えてほしい」「弱い者の味方になってほしい」という人々の願望が反映された存在として語り継がれたのです。

5. 民衆文化の中の義賊

さらに、義賊の物語は娯楽としても楽しまれました。歌舞伎や講談、民話などで語られる義賊たちの物語は、庶民が抑圧された現実を忘れ、彼らの活躍に胸を躍らせる手段でもありました。義賊の登場は、民衆にとって一種の「社会的なカタルシス」を提供するものでもあったのです。

 

義賊が支持され、物語として語り継がれた背景には、まさに当時の社会構造の厳しさと、庶民の間に広がっていた不満が存在しました。封建制度の中では、法や権力の不正に抗う手段が少なかったため、義賊が現れることで、民衆は彼らに希望を見出し、自分たちの代わりに正義を果たしてくれる者として共感したのです。そのため、義賊の物語は単なる盗みの話ではなく、民衆の願望や社会への反抗の象徴として、長く愛されてきたのです。

 

  • この記事を書いた人

Slaug

歴史家、言語学者、ドラゴンの化身

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